吉村知事は2022年11月30日夜、めざまし8で放送された新型コロナ第7波の情報に関する写真にコメントをつけて投稿しました。
しかし、実はここで引用された大阪府のデータは限定的な集計期間による誤った情報。実際の数値より大幅に低く、大阪のコロナ対策について陣頭指揮を執っているはずの吉村知事であれば、当然気づくべき誤りでした。
なおこの件の後、インフルエンザと新型コロナウイルスの比較を報じるニュースに大阪府のデータは用いられることはなくなり、石川県、茨城県、広島県の三県のデータが用いられるようになりました。
数値に問題があったのは、この表に使われた大阪府の致死率です。
フジテレビは、2022年11月7日 財務省より公表された「社会保障」資料のデータを引用していました。
その元となった大阪府健康医療部の資料はこちらです。
テレビ局が、財務省公表の公式な資料を鵜呑みにして利用してしまうのは仕方のないことかもしれません。しかし、データを国に報告する側である大阪府知事が、この数字が8月21日時点で判明していた死者数しか反映されていないデータであることに気づかなかったのは不注意が過ぎます。8月21日は、大阪府は第7波は真っ只中。大阪府の公式資料では9月26日までを第7波と記録しています。
(注:9月26日は、全数把握の見直し前後の区切りであり、大阪府が独自にそれまでの期間を第7波と定義付けしているにすぎません。実際の第7波と第8波の波間は、10月以降です。)
よって、参照すべき大阪府の第7波の致死率は、
60歳未満 57名 0.006%
60歳以上 1246名 0.756% となります。
実際には、大阪府の第7波の死亡者数は、579名ではなく1303名でした。
番組内で引用されたデータの元となった579名というのは8月21日時点の数字です。以降、11月30日までにさらに711名もの方が亡くなっていることを大阪府知事なら当然把握していたはずです。日々コロナ対応の陣頭指揮をしてきたはずの大阪府知事がこのような基本的な情報の間違いに気づかないというのは、いささか信じがたいことです。
この件はTwitter上でも複数人により指摘され、吉村知事は翌日に追加の情報を投稿しています。
「引用の大阪府のデータは、6月25日〜8月21日までのものと思われますが、9月26日まで(全数把握の見直しが行われるまで)のデータは、致死率60歳未満0.006%、60歳以上0.753%、重症化率60歳未満0.01%、60歳以上0.17%です。」
(注:吉村知事投稿時点で致死率0.753%と、4月23日判明時点のデータより算出する致死率0.756%と多少の誤差が生じるのは、10月31日以降判明した第7波期間内の60歳以上の死者が13名いるため。)
尚それ以降、この類のニュースに大阪府のデータが用いられることはなくなり、石川県・茨城県・広島県のデータが使用されるようになります。
大阪府の第7波の死亡者数は1303名です。711名も多くの方が亡くなっている現実を大阪府コロナ対策の最高責任者である吉村知事がなかったかのように扱ったことは、許されることではありません。
情報源
財務省 社会保障 新型コロナの重症化率等の推移 2022年11月7日 (P.7)
第18回 新型コロナウイルス感染症対策分科会 令和4年9月16日 参考資料 1:3~8
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai18/gijisidai_2.pdf
厚労省が分類見直し議論〈日本経済新聞 2022/12/21〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2177C0R21C22A2000000/
新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 2022年12月21日
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001027743.pdf
「協力の得られた石川県、茨城県、広島県のデータを使用し、令和4年1~8月に診断された新型コロナウイルス感染者を対象に、年齢階級別に重症化率及び致死率を2ヶ月毎(届出日基準)に算出した。」
参考:
国会で、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行されることが決まるまで
11月16日 衆議院厚生労働委員会で審議入り
11月17日 衆議院厚生労働委員会で質疑
11月18日 衆議院厚生労働委員会で採決、衆議院本会議で可決、参議院に送付
11月22日 参議院厚生労働委員会で審議入り
11月29日 参議院厚生労働委員会で質疑
12月 1日 参議院厚生労働委員会で採決
12月 2日 参議院本会議で可決、成立