大阪府の新型コロナ対応、失策の裏に見える吉村知事の知見不足

#コロナ対策
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新型コロナウイルスは流行当初こそ未知のウイルスでしたが、研究が進むにつれ様々な情報が明らかになっています。その一つが「肺以外への広範な影響力」です。
しかし、吉村知事が「新型コロナ=肺炎」という認識を改め、十分な医療体制を整えることはついにありませんでした。

吉村知事は、これまで「コロナで肺炎になって亡くなる」という表現を繰り返してきました。新型コロナウイルスは深刻な肺炎を引き起こすという、流行当初からの基本的な認識は大阪府独自の入院基準にも反映されてきました。

一方、新型コロナウイルスに関する最新の知見は日々更新され、徐々に「肺炎以外の危険な症状」の存在も判明してきました。しかし、大阪の入院基準や患者搬送体制が更新されることはありませんでした。

長く続くこの状況に対し、2022年12月には医療専門家らから吉村知事へ、酸素飽和度を主な判断材料にする現在の基準に警鐘を鳴らす進言もありました。

ウイルスの性質についての最新知見を大阪の医療体制に反映せず、特に小児患者のへの対応に大きな混乱を生じさせた吉村知事の責任は、決して無視できるものではないでしょう。

目次

大阪府の入院基準

酸素飽和度を判断する目安にすることに対し警鐘を鳴らす医療専門家

・小林先生 / 葛西医院
・長濱会長 / 訪問看護ステーション協会
・中森先生 / 関西医科大学総合医療センター
・藤見センター長 / 急性期・総合医療センター

以下、令和4月12月末に公表された「保健・医療分野における新型コロナウイルス感染症への対応についての検証報告書 有識者等からのご意見」より抜粋

(2)入院調整・転退院の促進、救急搬送
新型コロナウイルス感染症への対応における評価

葛西医院 院長 小林 正宜 氏 (P.18)

✔ コロナ患者の搬送において「トリアージ」は重要であるが、SpO2 を重視するあまり、搬送が必要な患者が搬送されず、コロナ肺炎ではなく合併症で生命の危機にさらされることを危惧。搬送の判断根拠を SpO2 以外の要素も十分に吟味することが必要であり、不搬送のアセスメントを明確にし、統計をまとめて公表することも検討いただきたい。

一般社団法人大阪府訪問看護ステーション協会 会長 長濱 あかし 氏 (P.19)

✔ 全てを酸素飽和度、呼吸状態だけで判断することは、臨床的に問題であった。

関西医科大学総合医療センター 救急医学科診療科長 中森 靖 氏 (P.20)

✔ コロナの入院適応が SpO2 だけで判断される風潮は危険

大阪急性期・総合医療センター 救命救急センター長 藤見 聡 氏 (P.21)

✔ 圏域等での入院調整への移行にあたり、入院対象統一基準も大事であるが、酸素飽和度だけではなく、患者を診察して入院先を決定するトリアージ病院と搬送部門の強化(例えば消防の搬送車)による下り転院ができるシステムが必要。
酸素飽和度が重症度を測る目安として独り歩きした。行政が患者を診ずにトリアージをするのは一般的ではなく、まずは医療機関が患者を診てトリアージする方が良い。
✔ 入院調整については、大阪市消防、大阪市保健所等を横断的に統括する大阪市の危機管理部門そしてBCP が機能していなかった。

また、大阪府に進言してきた医療専門家の一人である忽那氏も「新型コロナウイルスが肺以外にも様々な臓器に影響を及ぼすことも分かってきている」と二類相当の間、Yahoo!ニュースに寄稿されてきた記事の中で分かりやすく説明されています。

5類移行前、大阪府でコロナに感染した後「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」と診断された男児の例がNHKで紹介されました。

新型コロナの感染が世界で拡大して以降、子どもが感染後、川崎病のような症状を訴える事例が欧米を中心に相次いで報告され、「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」と名付けられました。国内では去年、自治医科大学附属病院の小児科医のグループなどが実態調査を行い、少なくとも64人がMIS-Cと診断されていたことがわかっています。

主な症状は、
▽持続する発熱
▽腹痛・下痢・おう吐などの消化器系の症状
▽全身の発疹やリンパ節の腫れ
▽目の充血(結膜炎)
など。

全身に炎症が起きるため、心臓など臓器の働きが悪くなることもあると伝えられています。

このような情報を吉村知事が周知したことはありません。
吉村知事は、新型コロナウイルスに弱いのは「高齢者」であるかのような発言も多くされていましたが、実際には大阪府内でも、オミクロン株以降は60人の小児が重症化しています。

~第5波 7例 (2020年1月29日~2021年12月16日)
第6波  20例
第7波  23例
第8波  17例(2022年9月27日~)

小児の入院についても、以下のようなご意見が検証報告書に寄せられていました。

(5)小児医療体制
新型コロナウイルス感染症への対応における評価

一般社団法人大阪小児科医会 会長 松下 享 氏 (P.29)

✔ 行政側の課題として、検査キット・防護服等の不足や、夜間に救急搬送又は来院された小児患者について、入院フォローアップセンターを通しての入院調整ができない事例があった。また、重症度を SpO2 や呼吸状態で判断するため、保健所に小児特有の病態を理解していただけずに入院調整がスムーズに進まない事例がある等、緊急入院が必要な際に、保健所を介するシステムは時間と労力を要した。

このように、様々な面で吉村知事の知識が、新型コロナウイルスに関する最新の知見に追いついていなかったことは明らかです。
複数名の医療専門家の意見が一致しているのにも関わらず、大阪府のコロナ対策には反映されなかったのはなぜなのか?どうして活かせるタイミングで大阪府にその情報を伝えることはできなかったのか?もっと現場の声に耳を傾け随時判断されて然るべきだったのではないでしょうか?大阪府民の命、延いては生活に関わる問題です。
「検証報告書」と称し身内のみで検証して済ますことなく、知識を最新情報に更新しないまま、現場で起きている問題を把握しないまま、コロナ対策の最高責任者であり続けたことは検証される必要性があるのではないでしょうか。

情報源

第24回 大阪府新型コロナウイルス感染症対策協議会 令和4年7月15日〈大阪府HP〉

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/37375/00430096/03_siryo.pdf

書面による意見提出により開催
議題 「府における入院・療養の考え方」改定について

保健・医療分野における新型コロナウイルス感染症への対応についての検証報告〈大阪府HP〉

大阪府/保健・医療分野における新型コロナウイルス感染症への対応についての検証報告 (osaka.lg.jp)

コロナ感染後 元気な小学生に異変が……〈NHKニュース 2023/4/27〉

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230427/k10014049931000.html

参考

・肺炎以外の新型コロナの症状 忽那賢志 氏〈2021/7/25〉

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210725-00249673

・新型コロナは全身性の血管疾患をもたらすウイルスか?

https://www.bhf.org.uk/informationsupport/heart-matters-magazine/news/coronavirus-and-your-health/is-coronavirus-a-disease-of-the-blood-vessels

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