2020年、在留資格の不備で入国管理局の施設に収容されたスリランカ人女性ウィシュマさん。過酷な待遇のなか体調を崩し、半年で20キロ痩せるなど瀕死の状態に陥りました。それでもなお入管職員は詐病の可能性があるとして最後までまともな医療を提供せず、ついにウィシュマさんは死亡してしまいました。
この事件に対し、傍聴席にいる遺族の目の前で2023/5/12の国会質疑に立った日本維新の会・梅村みずほ議員は、「“病気になれば仮釈放してもらえる”という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれがある」と、支援者に原因があるとする内容の発言をしました。
なお日本維新の会・音喜多駿政調会長は、この発言内容を5/17に党の見解として公に認めています。
追記)5/16、梅村議員は国会で「ハンガーストライキによる体調不良(=自己責任)だったかもしれない」とも発言しました。
追記)5/18、日本維新の会・藤田文武幹事長は、音喜多氏の発言をひるがえす形で「梅村氏が党の指示に従わず不適切な質疑をした」とし、参院法務委員会の委員からの更迭を発表しました。
ウィシュマさん事件 時系列
2020年8月 同居人のDVに耐えかね交番に駆け込んだところ、名古屋入管に収容される。
12月 DV加害者から「スリランカに帰ったら探し出して殺す(原文:罰を与える)」との手紙が届く。
2021年1月中旬以降 全身にしびれが広がり、めまい、下半身が重く動かない
※仮放免の許可を申請するも、1度目は不許可、2度目は可否そのものが判断されず
※度々行われていた庁内診療(名古屋入管内)で、医師から「詐病」という診断が下された記録なし
1/31 嘔吐・吐血のため迷惑だと単独室に移される。
※処方されている薬はビタミン剤とロキソニンのみ
2/2 ウィシュマさんからのハガキに「全然大丈夫じゃない。2週間前から大丈夫じゃない。食べられない、飲めない。全部体が痺れている。回復させたいけどどうすればいい?助けてください。食べないといけないけど、ご飯も水も吐いてしまう。」と記載
2/5 外部の総合病院(消化器内科)で受診。内視鏡検査で、「ほぼ異常なし」「内服できないのであれば点滴、入院を」と、点滴を打つ提案がされたが、入管は時間がかかることを理由に、点滴を打たずに連れ帰る。
※法務省の「中間報告」では、「医師から点滴や入院の指示がなされたことはなかった」と事実と違う記載
2/8 支援団体より「入院させ、点滴を打つ」ことを要請
2/15 飢餓状態、腎臓・肝臓障害の疑いを示す、異常値の尿検査結果が出る。
※血液検査すべきだったが、なぜかされず。
2/18 嘱託医は「体調不良はストレス等による心因性のものである可能性があると判断
3/3 車いすから体を起こせないほど衰弱。
3/4 精神科を受診
「支援者から『病気になれば仮釈放(仮放免)してもらえる』と言われている」「体は大丈夫だ」と同行してきた入管職員から、精神科医師は口頭で伝えられる。(尿検査結果は知らされず)
3/6 死亡
2022/2/28 死因について、「食思不振(食欲の低下)による脱水と低栄養」に、血液中のリンパ球が異常となる「血球貪食症候群」が合併した多臓器不全と、鑑定書で記される。
2023/5/12 梅村みずほ議員が、日本維新の会 代表質問にてウィシュマさんが詐病の可能性と発言
5/16 梅村みずほ議員がウィシュマさん遺族の弁護団からの質問状に法務委員会において、「事実はありません。しかし可能性は否定できません」と事実はないことを認めつつ、「ハンガーストライキによる体調不良だったかもしれない」と発言。
5/17 日本維新の会 音喜多政調会長が「問題提起としては間違ったことはいっておらず、我が党として行った」と表明。
5/18 日本維新の会 藤田幹事長が「梅村氏が党の指示に従わず不適切な質疑をしたと受け止めて「参院法務委員会の委員から更迭します」と発表。
梅村氏のこの国会発言は、維新の会としてチェック済み
音喜多政調会長への囲み取材発言より抜粋〈2023/5/17〉
(5/16支援者からの抗議を受けて政調会長として受け止めは?)本会議の質問は当然政調が最終チェックをしている。問題提起としては間違ったことはいっておらず、我が党として行った。原稿を書いたのは梅村議員だが、我々もチェックをしている。
梅村みずほ議員がウィシュマさんの死因めぐる発言に涙で「根拠がある」と反論 維新は更迭〈東スポ 2023/5/18〉
梅村氏は…「どこがデマなのか。私の根拠は調査報告書、資料、ウィシュマさんのビデオです。…」と涙を流し、声を張り上げて語った。支援者の対応については「ウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況につながった恐れも否定できない」との発言を繰り返した。
同委員会の終了後、ウィシュマさんに対する発言を「撤回しない」と答えた梅村氏。維新の藤田文武幹事長は国会内で緊急会見を開き、梅村氏が党の指示に従わず不適切な質疑をしたと受け止めて「参院法務委員会の委員から更迭します」と発表した。
スリランカ人女性との面会記録(最新版)〈START~外国人労働者・難民と共に歩む会~ 2021/7/7〉
2020年12月16日(水)(面会)
同棲していた男性から、名古屋入管に収容されていたウィシュマさんのところに2回手紙が届いた。その手紙には、男性が、彼女の生活状態を気遣う言葉が書かれていたが、彼女が男性のことを警察に通報したことについて恨んでいて、「スリランカに帰ったら私を捜し出して殺す(原文は「罰を与える」)と手紙に書いてある。」と、ウィシュマさんは話していた。
維新・梅村みずほ参院議員「支援者がウィシュマさんに淡い期待抱かせた」と主張 議場から抗議の声 入管法改正案参院で審議入り〈news23 2023/5/13〉
改正案に賛成の立場の日本維新の会所属の梅村みずほ参院議員からは、こんな発言も…
梅村みずほ 参院議員
「ウィシュマさんの映像を総合的に見ていきますと、よかれと思った支援者の一言が、皮肉にもウィシュマさんに“病気になれば仮釈放してもらえる”という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれも否定できません」
梅村議員が「事実はないが、可能性があると私が資料を見て考えに至った」
ウィシュマさん遺族の弁護団からの質問状に法務委員会において、詐称等について、「事実はありません。しかし可能性は否定できません」と、事実がなく自分の意見であることを認める。
「支援者がウィシュマさんに淡い期待させた」 維新・梅村氏が発言〈朝日新聞 2023/5/12〉
日本維新の会の梅村みずほ参院議員は12日、難民申請中の送還を可能とする入管難民法改正案の審議で、入管施設に収容された外国人の支援について「支援者の助言は、かえって収容者にとって見なければよかった夢、すがってはいけない『わら』になる可能性もある」と述べた。… その中で、梅村氏は「資料と映像を総合的に見ると、よかれと思った支援者の一言が、ウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれも否定できない」と主張。
維新・梅村みずほ議員 ウィシュマさん死因「ハンガーストライキによる体調不良だったかも」〈TBS NEWS 2023/5/16〉
日本維新の会の梅村みずほ参院議員が国会で、入管施設で亡くなったスリランカ人女性の死因について「ハンガーストライキによる体調不良だったかもしれない」と主張したことから、一時騒然となりました。
ウィシュマさん死因判明、鑑定書に記載 代理人「不起訴は不合理」〈毎日新聞 2022/9/1〉
死因が記載されていたのは22年2月28日付の鑑定書。「食思不振(食欲の低下)による脱水と低栄養」に、血液中のリンパ球が異常となる「血球貪食症候群」が合併した多臓器不全と記されていた。
梅村みずほ議員は、その場に遺族がいると知っていたはず
石垣のりこ@norinotes宮城県選挙区選出参議院議員(立憲民主党)2023年5月12日維新・梅村みずほ議員によるこの発言が出た5月12日の参院本会議場の傍聴席には、ウィシュマさんのご遺族と支援者がウィシュマさんの遺影を持って座っておられたことを申し添えます。
野党議員のみならず、自民党の大臣も、傍聴席のご遺族と支援者に会釈する中、この発言が出たのです。
ウィシュマさんのご遺族が傍聴されることは、各党参加の議運で事前に了承されています。通常、議運了承事項は、各党が持帰り、本会議前に全議員に共有するはずです。
なぜか見過ごされた尿検査の結果 ウィシュマさん死去1年〈毎日新聞 2022/4/24〉
飢餓状態、腎臓・肝臓障害の疑い示す尿検査結果
最終報告書を読み、尿検査結果などを見た内科医の今川篤子・あびこ診療所所長は「いずれも大幅に基準値を超えており、この結果を見てすぐに採血をすべきでした。そうすれば肝臓、腎臓の障害がおそらく分かったはずです」と指摘する。…
嘱託医、「検査結果の記憶定かではない」
しかし、この尿検査の結果は名古屋入管内で見過ごされ、その後、外部病院の精神科を受診した際にも情報提供されなかった。
暴力に耐えかね交番へ…入管からの「仮放免」求めた外国人女性の死が問う”難民鎖国ニッポン“の問題〈東海テレビ 2021/6/21〉
4年前に留学生として来日したウィシュマさんは、スリランカで語学学校の先生になるため、日本語学校で学んでいました。しかし、同居していたスリランカ人の男性から暴力をふるわれるようになり、学校は休みがちに。学費も滞り、除籍処分となったことで「在留資格」を失いました。…そして去年8月、暴力に耐えかねて交番に駆け込みましたが、在留資格のない彼女が送られたのは、名古屋入管でした。…、収容から5か月経った1月中旬、体調が悪化したといいます。
START代表・松井さん:「手足のしびれ。指先とか足の指とか、唇とか舌とかがしびれると盛んに訴えるようになって。しびれは全身に広がってしまって、歩けなくなる」
嘔吐を繰り返し体重は、収容から5か月で12.5キロも減少。命の危機が迫るなか、ウィシュマさんは「仮放免」を求め続けました。…
全部吐いてしまいどうしたらいいか分からない…手紙に書かれていた悲痛の叫び
2月5日、入管の判断でウィシュマさんは外部の病院で診察を受け、そのとき診察をした医師の記録には『内服できないのであれば点滴、入院』と残されていました。
しかし入管職員は点滴治療や入院措置はせず、ウィシュマさんは収容施設に連れ戻されました。法務省が 経緯をまとめた「中間報告」には、「医師から点滴や入院の指示がなされたことはなかった」と記載。カルテに書かれた事実とは異なる内容でした。…そして1か月後の3月3日…。
松井さん:「イメージとしてはもう亡くなっていましたね。生きている状態じゃない」
真野さん:「もう見るのもつらい。彼女ももう座位がとれない。車いすに座っていられない状態、ずるずると落ちるという感じ。それでも私に体を起こして、手は硬直していた。手を伸ばして『ここから連れていって』って彼女が言ったの」その3日後の3月6日、職員の呼びかけに応じなかったウィシュマさんは、搬送先の病院で死亡が確認されました。
ウィシュマさんを診療した医師は遺族に何を語ったのか ―「最終報告」に盛り込むべき3つの重要点〈Dialogue for People安田 菜津紀取材レポート2021/7/5〉
「支援者から『病気になれば仮釈放(仮放免)してもらえる』と言われ」の部分に関しA医師は、同行してきた入管職員から口頭で伝えられたと語ったという。また、もしもこうした「情報」が入管から与えられていなかった場合、詐病の可能性を疑ったかという点について、「疑わなかった」とも語った。…A医師から見てウィシュマさんはぐったりしている様子であったものの、同行していた入管職員に「外部のB病院で内科検査を受けて問題なかった」「体は大丈夫だ」と伝えらえられていたという。けれどもB病院での診療は2月5日、A医師の診療の1カ月も前のことだ。この点について、代理人の指宿昭一弁護士は、「(B病院では)胃カメラをやったくらいで、内科のあらゆる疾病が否定されるほどの調査はやっていないんです。前提がおかしい」と強調する。…B病院の診療記録(2月5日付)には、「(薬を)内服できないのであれば、点滴、入院」と記されていたことが分かっている。…《(B病院医師から)点滴を打つことについても話があったが、「長い時間がかかる」ということで、入管側は「入院と同じ状態になるので」、点滴をうたずに女性を入管に連れ帰った(処遇部門の職員から聴き取った話)》と記されている。