データを都合よく切り取る吉村知事。大阪府のコロナ死亡者数が全国最悪との批判を否定

#嘘・デマ・印象操作
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吉村知事は「大阪府のコロナ死者数の多さは、高齢者人口の割合の高さと関係がある」というような説明を度々しています。また2023年になってからは「東京都より死者数が少ない」という説明も耳にします。
しかし「割合」と「実数」で比較するのは単位が異なるため一貫性がないのは明白。
まるで、橋下元知事の言葉「数字は何とでもなる。見せ方次第だ。」を彷彿とさせるような、誠実さを欠く発言です。
東京都と大阪府のコロナ死亡者数の比較は、日々公表されてきた速報値で比較しようと人口動態調査のデータを用いて比較しようと、どちらにせよ人口差を考慮して比較すべきです。

目次

コロナ死亡者数:正式に公表されるデータには、感染症法に基づき公表される「速報値」と「人口動態調査」の2種類がある

吉村知事は「自治体の発表するコロナ死者数の速報値は正確ではありません。厚生労働省が数か月遅れで発表する人口動態調査が一番正確です。」と、大阪府知事選挙告示日直前の3月中旬に開催された維新の会のタウンミーティングで話しましたが、会場で初めて「人口動態調査」という単語を耳にした府民には誤解が生じていた可能性があります。

吉村知事からは「東京都 7000人台、大阪府は6000人台」「ちょっとここで丁寧に説明したい」という発言もありましたが、当時の最新のデータを参照すると、正確な人数は「東京都 7190人、大阪府 6786人」のことを言っていたことになります。これは、丁寧で正確な説明と言えるでしょうか?正確な数値を示すことなく曖昧な表現をされていて、府民に対して誠実に説明責任を果たしているのか疑わしくありませんか?

5類移行直前まで活用された速報値は入院中や療養中に亡くなった陽性者を集計して公表するデータであり、実際の死因との因果関係の確認等検証の余地があるため、正確性には限界があるとされています。しかしこの速報値は臨時に行われた対策などの影響が反映されやすいため、重要な意義を持っています。

一方で、人口動態調査は数か月遅れて発表されるために遅延が生じますが、確定的な死亡証明書に基づく統計的データであり、より正確な情報を提供することが期待されています。ただし、人口動態調査の発表が自治体の速報値よりも正確であるということは、必ずしも全ての場合に当てはまるわけではありません。
よって、両方のデータを活用することが望ましいとされています。

例えば、タウンミーティング時点での最新の大阪府の人口動態調査(3月の5か月前 2022年10月分)を参照すると死亡者数は6786人でした。日々の速報値では10月31日時点で6611人と公表されていましたので、この月は速報値+175人の差があると分かります。

・感染症法に基づく速報値(月末時点)と人口動態調査による死亡者数の比較

タウンミーティング時点で大阪府のコロナ死亡者数は8400人を超えており、中には「大阪府は6000人台」と聞き、人口動態調査の方が2400人少ないというイメージを抱いた人もいた可能性はありませんか?しかし、そもそも8400人超は2023年3月時点の死亡者数(日々の速報値)で、2022年10月の死亡者数(人口動態調査)とは比較できない数値です。同じ期間のデータでなければ比較できません。

東京都と大阪府のコロナ死亡者数を比較する場合には、人口比を考慮する必要がある

人口差を無視した実数と、人口比を考慮しパーセンテージで示されたデータとで比較する場合とでは、それぞれ異なる数値の表現方法であるため、正確な比較にはなりません。

読売新聞によれば「大阪府は高齢者が多い」という吉村知事の仮説(大阪府からは根拠となる資料提出はされていない)は、「高齢者75歳以上の割合を東京都は12.1%、大阪は14.7%と比べて大阪府の方が多い」と人口における割合で比較され、主張されています。その説を採用するのであれば、コロナ死亡者数に関しても人口動態調査のデータを用いて東京都9790人、大阪府8703人(最新・2023年4月時点)と実数で比べ東京都が多いと主張するべきではなく、割合で比較するべきです。

・人口100万人あたりのコロナ死亡者数

グラフのように、人口を考慮したコロナ死亡者数は、東京都より大阪府が多くなります。

逆に、人口動態調査によるコロナ死者数を「実数」で比較しようとするのであれば、
高齢者75歳以上は
東京都は179万1000人
大阪府は129万6000人
東京都の方が大阪府より49万5000人 高齢者人口は多く、
大阪府の方が「高齢者が多い」とは言えないことになります。

人口比を考慮しない「実数」と人口差を折り込んだ「%」で表現された数値を混同して比較することは適切ではありません。同じ表現方法で揃える必要があります。

よって、人口比を考慮し「東京都より高齢者が多い」という前提で話をするのであれば、人口比を考慮したコロナ死亡者数は、東京都より大阪府の方が断然多いことになります。

実は、東京都区部の人口は9,717,480人で
大阪府全体の人口8,774,974人と大差ありません。
ですが、人口動態調査による死亡者数(実数)で比較すると、
大阪府の死亡者数の方が東京都区部より多いのは明らかです。

・人口動態調査(実数)による比較

情報源

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第 15 条  1 項

(感染症の発生の状況、動向及び原因の調査)

 都道府県知事は、感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者又は感染症を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の所有者若しくは管理者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。

に基づく積極的疫学調査の一環として、患者の死亡情報を、都道府県の発表を日々集計し、厚生労働省で死者数を公表してきました。

厚生労働省「人口動態調査」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

大阪府が人口動態調査においても死亡者数ワースト1だった時期は、

2021年・・・第4波(医療崩壊が決定的となった)
4月 466人
5月 876人

2022年・・・第6波(大阪市消防局がすぐに119番通報するのは控えるよう、市内の高齢者施設に通知していたことがわかったと報じられたのが2月10日)
2月 1049人
3月 712人
4月 205人

特に目立つのは、第4波 2021年6月の大阪府の死亡者数の多さです。

なお、厳密には人口動態調査にも速報値と確定値があります。ここでは、吉村知事は年間で公表される確定値ではなく速報値の例を用いて人口動態調査の話をされていましたし、2類相当扱い終了後についても、国は5か月後に公表される速報値を伝えると報じられているため、記事中で「人口動態調査」と表記しているものは、すべて「速報値」を意味します。

※2023年になって、維新の会が急に「人口動態調査」のデータを用い始めた背景には、2022年7月時点(2022年12月公表最新データ)の東京都の死者数が大阪府の死者数をわずかに上回り、逆転したことが関係している可能性は拭えません。(東京都 5605人・大阪府 5557人)

▼新聞

〈読売新聞2022/9/4〉

「大阪府は、東京都に比べて、重症化しやすい高齢者の人口に占める割合が高い。総務省人口推計(2021年10月時点)によると、大阪府の75歳以上の後期高齢者は129万6000人で、東京都の170万1000人より少ないが、人口に占める割合は14.7%で、東京都の12.1%より、2.6ポイント高くなっている。」

※大阪府とは包括連携協定を締結する読売新聞が「高齢者の割合が大阪府は東京都より高い」という吉村知事の発言をデータで証明した記事

【田中氏】

5類移行目前の5/7、読売新聞にて「コロナ 関西の闘い 大阪府の死者数 全国最多」と見開き一面を使い、特集

「高齢者数が多い」説を採用する読売新聞は、「大阪府の死者数」が「全国最多」であると報じました。

コロナ5類移行後「定点把握」で流行監視どうなる?〈NHK 2023/4/12〉

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/category5/detail/detail_44.html

コロナで症状悪化しても119番控えて 大阪市、高齢者施設に通知〈朝日新聞 2022/2/10〉

https://www.asahi.com/articles/ASQ2B63D5Q2BPTIL02L.html

内閣府 令和3年版 高齢者社会白書

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/html/zenbun/s1_1_4.html

(65歳以上人口)

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