関西経済連合会・松本会長は2021年8月18日、「野戦病院」の設置を求める提言を発表しました。これを受け、2022年1月31日にインテックス大阪に開設された大規模医療・療養センターでしたが、最終的な利用者数は予想をはるかに下回る303人。一人あたりの費用は膨大な額になってしまいました。
インテックス大阪が設備や防寒の面で「臨時医療施設」には不適切であることは事前に指摘されていました。それを無視する形での決定の裏には、吉村知事による強いこだわりがあったことが明らかになっており、吉村知事の利害や思惑が優先された可能性が示唆されています。
府民の命を守る重要な施策の検討過程で、医療専門家の進言や健康医療部からの問題提起が蔑ろにされたことは、府民への重大な背反行為ではないでしょうか。
松本会長(関西経済連合会)は2021年8月18日、臨時の医療施設「野戦病院」の設置を求める提言をまとめ発表。同日、当時の西村経済再生担当大臣にオンライン意見交換会で要望しました。この提言書は大阪府と関西広域連合にも届けられています。
松本会長は、事前に大阪市役所を訪ねており、当時の松井市長からインテックス大阪を利活用することについて内諾を得た上で直談判を行っていました。大阪大学医学部附属病院に働きかけたのも、松本会長です。
そうして開設された大規模な医療・療養センターですが、利用者はわずか303人にとどまり、最大利用者数は一日70人に過ぎませんでした。累計の利用者数に対して、かかった税金は78億円、一日一人あたり2600万円もの税金が投入されたことになります。
同センターは、コロナ感染症の治療には不適切であり、設備も不十分で、寒さ等の問題がありました。事務方からは、開設前から医療従事者の不足や病床の運営について等の問題点を指摘されていましたが、吉村知事はその懸念をよそに、インテックス大阪への野戦病院開設にこだわり、トップダウンで方針を決定していたことが明らかになっています。大阪府幹部は「大規模療養センターをやるにしても、ハコありきではなく中身をしっかりと詰めたうえで、見合ったハコを決めるべきだった」と指摘しています。
大阪市所有のインテックス大阪の賃貸料は30億円であり、コロナでほとんど稼働のなかった国際展示場にとっては大きな収入源となっています。
また、同センターの準備がすすめられたのが、2021年10月31日投開票の衆院解散総選挙に近い時期であったことから、選挙を見据えた「実績作り」の思惑も示唆されています。
情報源
▼関西経済連合会
1.新型コロナウイルス感染者のための臨時大規模医療施設に関する提言 全3頁(2021年8月18日)
https://www.kankeiren.or.jp/coronavirusteigen.html
2.大阪コロナ大規模医療・療養センター開設にかかる 物品・サービス提供のご協力のお願い(2021年9月27日)
https://www.kankeiren.or.jp/210927info.pdf
新聞
「野戦病院」設置、政府に提言 関経連、医療の逼迫で〈朝日新聞 2021/8/18〉
https://www.asahi.com/articles/ASP8L6RCMP8LPLFA00B.html
「野戦病院型」の大規模施設設置を提言 関経連〈産経新聞 2021/8/18〉
「経済界としても、自治体などがベッドや酸素吸入器を短期間で確保できるよう製造企業などへ協力を求めるとした。」
「野戦病院型」の大規模施設設置を提言 関経連 – 産経ニュース (sankei.com)
「野戦病院」関経連トップが動かす 大阪府知事に直談判〈日本経済新聞 2021/11/17〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF221GT0S1A920C2000000/
現代ビジネス編集部
・事務方は反対していた!78億円で303人 大阪コロナ施設「吉村知事」のゴリ押し発言録を入手
https://gendai.media/articles/-/96004?imp=0
「野戦病院、インテックスでできないかと思っている。」と言う吉村知事に、
健康医療部は「インテックスは難しいと思う。」と、問題提起。
この「知事レク」の2日後 8月20日、大阪府庁の知事応接室で、吉村知事は関経連の松本会長らと向かい合います。
健康医療部は「一番の課題は人材」と懸念を示していたが、吉村知事はそこに耳を傾けた形跡はない。こうしてインテックス大阪でされる事業として押し切られていきます。
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部 2021年8月25日 事務連絡
- 現下の感染急拡大を踏まえた臨時の医療施設の設置の推進について
https://www.mhlw.go.jp/content/000823766.pdf
「医療資源の効率化・集約化等の観点から、臨時の医療施設の設置についても、積極的かつ速やかな検討を行う」よう各都道府県に要請が出されました。
吉村知事、初めて臨時医療施設開設に言及 〈2021/8/27〉
中等症のご案内〈大阪府HP〉
https://www.pref.osaka.lg.jp/kansenshoshien/yasenchutosyo/index.html
(2024/5/28 大阪府公式ウェブサイト全面リニューアルに伴いリンク切れ)
□セーター、タイツ、厚手の靴下等も忘れず 館内は寒いので着替えも持参
□カイロ 防寒用
※令和5年5月現在、大阪府HPでは当時のしおりとは別物が公開されています。
上記の文言が削除され「必要に応じ上着、ひざ掛け、毛布等をご持参ください」と。
▼AERAdot.
・84億円投じた吉村知事肝いりの大規模医療・療養センターはガラガラ「寒すぎて、失敗」と療養者
https://dot.asahi.com/dot/2022030900100.html?page=1
大阪府庁の点検・棚卸し結果(2008~2022年)参考資料1-2
大阪府/第19回「副首都ビジョン」のバージョンアップに向けた意見交換会 (osaka.lg.jp)
財源は、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金
この大規模医療・療養センターは、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金で設置・運営されていたので、財源は国庫支出金です。
予算編成過程の公表 大阪コロナ大規模医療・療養センター運営事業費 〈大阪府HP〉
https://www.pref.osaka.lg.jp/yosan/bizlist/index.php?acc=1&bizcd=20210326
「大阪コロナ大規模医療・療養センター」閉鎖へ
大阪府の大誤算 1000床整備も使用率7%、コロナ療養施設閉鎖へ〈産経ニュース 2022/4/14〉
https://www.sankei.com/article/20220414-T6W6MLEM7RL2HN55ZKRSFLA7YA/
大半の陽性者は、インテックス大阪(大阪府大阪市住之江区)まで、自家用車で向かう想定で計画されていました。この点も問題視されています。