日本維新の会の幹部が、自身の秘書が代表などを務める会社に多額の公金を支出していた問題で、新たに地方議員の関係会社が公金の受け皿となっているケースが複数確認された。「身を切る改革」が党是の維新内で、同僚同士が公金での受発注を繰り返す構図が明らかになったが、議員らは、今後は支出しない考えを示している。
毎日新聞2025年12月11日配信記事より引用する。

目次同僚への公金支出が常態化
藤田文武共同代表(衆院大阪12区)は2017~24年、政党支部などを通じて公設秘書が代表を務める会社に「ビラ印刷」などを発注。確認できた20年以降で、公金支出は約1507万円に上った。
今回新たに、藤田暁大阪市議が設立し、一時は自宅を所在地にしていた広告会社「デザインビレッジ」(大阪市北区)に広報物を発注していたことが判明。19~24年の少なくとも約606万円について、政党交付金や調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)などの公金を充てていた。
23、24年分の政党交付金使途等報告書や24年衆院選の選挙運動費用収支報告書からは、藤田共同代表以外にも9人の国会議員が政党支部などを通じてデザイン社に発注していたことが確認できた。支出された公金の総額は約1136万円に上る。
維新内では他にも、党本部や堺市議団、大阪市議などがこの会社を利用していた。
デザイン社に広報物を発注していたある大阪市議は「初当選時に先輩議員か秘書から紹介された。藤田市議が関わっていることは後で知った」。別の関係者は、多くの議員が同社を利用していた理由を「(体裁や要点など)いちいち要領を説明しなくて済むので、議員側も頼むのが楽だったのだろう」と語った。
藤田市議「法人を解散する」
藤田市議は5日、自身のユーチューブ番組で「政治家のチラシがあまり読まれていないとの問題意識から、親しみを持ってもらえるデザインにすることで、有権者との距離を縮められるんじゃないかと(思って)作った法人だ」と経緯を説明。
「相場と比べて比較的安い値段を設定してきたと自負している」とし、「党の内規(当時)や法令に照らしても合法だが、誤解を持たれるようなことはやめていこうということで、法人を解散する」とデザイン社の解散を発表した。
地方議員の関与、他にも
維新国会議員から地方議員への主な公金支出
青柳仁士衆院議員(大阪14区)は22~23年、自身の政党支部を通じて、選挙区内の大阪府羽曳野市議(当時)が代表のデザイン会社に広報物作成費など計約57万円を支出していた。青柳氏は取材に、維新議員が代表を務めていることを「知っていた」とした上で、「法的問題はないとの認識だった。外形的な公正性をもっと注意深く考えるべきだった」とし、今後は契約しない考えを示した。
24年には、梅村聡衆院議員(大阪5区)が同府豊中市議が代表を務める会社に「宣伝広告委託業務料」として約180万円を支出していた。石井苗子(みつこ)参院議員(比例)も23、24年、ポスターやビラなどの印刷・製本やため書きの作成費を奈良県葛城市議が代表の会社に計約107万円で発注。いずれも全額公金で賄われた。
奥下剛光衆院議員(大阪7区)は初当選した21年衆院選で、当時大阪市議だった佐々木理江参院議員(大阪選挙区)が代表取締役を務めていた自動車関連会社「SDDオートスポーツ」から、選挙運動用自動車を約19万円でレンタル。同社は20年の大阪府箕面市議選、23年府議選でも維新候補に貸し出し、計約26万円を受け取った。いずれも公費負担の上限いっぱいだった。佐々木氏は取材に維新関係者との取引を認めたが、同社からの報酬の受け取りは否定した。
国会議員以外でも
国会議員による支出以外でも、同様の構図が見られた。
兵庫県では維新所属の県議が23年の県議選で、公費負担のポスターやビラの印刷を自身が代表の会社に約16万円で発注。県議は「自社を通して大手ネット印刷会社に頼んだ。マージンは取っていない」と述べた。この会社は21~24年、維新の政党支部や国会議員の後援会からも支払いを受けていた。県議は「いずれも相場より安い金額で、キックバックは一切ない」とし、今後も続けるかは「党の方針に従う」とした。
東大阪市議会の政務活動費収支報告書などからは、維新市議団が21~24年度、維新の大阪府吹田市議が代表を務める会社にホームページ(HP)維持費などとして、政務活動費から計約65万円を支払っていたことも判明。吹田市議は取材に「政務活動費が充てられていたことは知らなかった。東大阪市議団からはHPをストップしてくれと連絡があったばかり。もう仕事を受けることはない」と語った。
維新は「身内」への公金支出が相次ぎ指摘されたことを受けて、政党交付金に関する内規を改正した。従来、議員や3親等内の親族への人件費や事務所賃料の支出を禁じてきたが、来年1月以降は支出先や対象となる業務を拡大。秘書や秘書が代表を務める会社のほか、地方議員が代表の会社にも適用する。
しかし、一部例外もあるほか、会社の代表と実質経営者、株主の線引きが不明確といった課題もある。また、政務活動費は内規の対象となっていない。
吉村洋文代表は4日、内規の改正を受けて「外形的に疑義が生じうるものについて線引きを議論してきたが、いろんなパターンがあり、規約で全部律するのは難しい」と説明。「違反にならなかったとしても、身内の企業と見られる可能性があると思ったら控えるべきだ。納税者の納得できるものでないといけない」と述べた。
「身を切る改革」が影響? 反論も
「身を切る改革」を掲げる維新は、所属議員に議員報酬のカットを義務付けている。条例改正などで報酬削減を実現できない場合は、報酬額に応じて5~20%を党本部が徴収し、被災地などに寄付してきた。
しかし、副業を持たない地方議員は、議員報酬から健康保険料や生活費、議員活動の経費を賄う必要があり、内部には「人材獲得の足かせになっている」との指摘もある。松沢成文参院議員(神奈川選挙区)は2024年11月、維新代表選で「小さな市町村の議員から『アルバイトをしないと生活できない』と悲鳴が上がっている」と見直しを訴えた。
内規の改正で関係会社の受注が規制されることになったある地方議員は、受注の経緯を「『身を切る改革』で議員報酬を2割カットしている。だからその分、自分たちで事業をしないといけない」と説明した。
一方、別の地方議員は「『身を切る改革』を掲げて当選した以上は、そういう金稼ぎに走るべきではない。カット分を補おうというのではなくて、(やるかやらないかは)単純にその人自身の問題だ」と受け止めた。【毎日新聞/矢追健介・宮本翔平・高良駿輔】



