自民党と日本維新の会の連立を実現させた影の主役で、首相補佐官に抜擢された遠藤敬・維新国対委員長。
遠藤氏が代表を務める維新の政党支部は、過去5年間に公設秘書3人から合計約800万円の寄附を受けていた。(令和5年分から収支報告書の会計責任者は遠藤敬氏本人)
公設秘書の給与は税金を原資として支給されており、国会議員秘書給与法では、寄附の勧誘や要求は禁じられており、給与の一部を事実上上納させるような形で政党や議員側に還流させることは問題となり得る。
過去の類似事例と照らし合わせれば、その職責の在り方が問われる状況にある。
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言 〈週刊ポスト 2025年12月5日〉
本誌・週刊ポストはその遠藤氏の「秘書給与ピンハネ」による税金約800万円還流疑惑を掴んだ。
本誌は遠藤氏が代表を務める政党支部(日本維新の会衆議院大阪府第18選挙区支部)の政治資金収支報告書を確認し、公設秘書3人から5年間(2019~2022年、2024年)で総額796万547円の寄附を受けていた事実を確認した。公設秘書の給料は国から支給され、原資は税金だ。
寄附をしていたうちの1人である元公設秘書A氏は取材に対し、「……(政治資金収支報告書を)見たんですね」と応答し、寄附の経緯を聞くとこう話した。「何も言えない。言えないというか、わかんない。私らは、『そうですか?』というような形でしたから。『(寄付を)せなあかんの?』ということです。遠藤から言われてはないですよ。ある人から言われたら、はいはいと言わんとしゃあないですよね」
公設秘書の給与ピンハネは何度も問題化し、2004年には国会議員秘書給与法が改正された。上脇博之・神戸学院大学教授はこう指摘する。「国会議員秘書給与法(第21条の3)では寄附の『勧誘』や『要求』という行為を禁じている。公設秘書が自発的に寄附を行なうことは禁じていません。ですが、仮に自発的な寄附であっても、勧誘していたらそれはアウトです」
遠藤氏に寄附していた公設秘書たちは勤務実態があったとはいえ、税金が原資である秘書給与を上納させられ、税金が政党支部に還流していたとしたら同様の重大事案だ。

遠藤氏にはゴルフコンペ大会(森和臣大阪府議主催・開催日は衆議院選挙期間中)に協賛品として提供された景品に関する疑惑もあり、公職選挙法および政治資金規正法上の問題が指摘されている。
遠藤氏は協賛品として、交通費やホテル代込みの『国会見学チケット』を提供するのが慣例化しています。昨年は衆院選期間中だったため、遠藤氏の政策秘書も会場に来て、選挙ビラを机に配布していた
収支報告書にも記載されず、企業から無償提供された景品。それを有権者にプレゼントし、中には参加費以上の景品をもらう人もいる。はたしてこの構図には、法律上の疑義はないのか。「政治とカネ」問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授はこう指摘する。
「政治資金規正法上、企業からの無償提供は企業献金(会社の寄附)となります。それを受けられるのは政党(と政治資金団体)だけと定められている。政党以外の政治団体が寄附を受ければ、違法な企業献金の受領にもなります。もちろん、収支報告書に記載しなければ不記載・虚偽記入にもなる。つまりは、二つの意味において、政治資金規正法違反の疑いがあります」
法的な問題はこれだけではない。公選法に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授が語る。
「公選法では選挙民への寄附行為が禁止されています。参加費以上の景品を政治家が渡せば、有権者への利益供与となり、公選法違反の買収行為となる可能性がある」
これは、森氏のみならず、選挙期間中に景品を提供した遠藤氏も例外ではない。
「厳密には政治家による景品の無償提供自体が、地元買収になりかねない。選挙期間中なら、とりわけ買収が成立する可能性が高くなる」
