【全文掲載】 「議員定数削減」大阪市会・本会議での“反対討論”

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2023年6月9日(金)、大阪市議会では、議員定数を現行の81から11削減し、70とする条例改正案が審議されました。
本会議では、2人の議員が反対討論を行いました。
無所属の武直樹議員は「多様な声が届きにくくなり、住民のチェック機能が弱くなる。『身を切る改革』というなら、議員報酬削減で実現すべきだ」と指摘。共産党の山中智子団長は「『減らせばいい』と言わんばかりの削減は、議会制民主主義の重大な後退を招く。極めて拙速で乱暴だ」と批判しました。
しかし、2人の指摘は吟味されないまま採決へ。条例案を共同提案した大阪維新の会、公明党、自民党・市民クラブなどの賛成多数で可決されました。
これは、戦後初の市議選が行われた1947年以降で最大の削減数ですが、審議時間はわずか22分でした。

目次

●武直樹議員(無所属)の反対討論[全文] 〈大阪市会本会議 2023/6/9〉

私は、自由民主党・市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団に所属していますが、議員提出議案第15号大阪市会議員定数及び各選挙区 選出数に関する条例の一部を改正する条例案につきまして、政党に所属しない無所属の議員、武直樹として反対の立場から討論をいたします。

私が反対する理由は、市民生活に直接関わる基礎自治体である大阪市において、小さい声、声なき声、届きにくい声など、多様な声がますます届きにくくなるからです。そして、大きな執行権を持つ市長の行政運営を住民の立場からチェックする機能が弱くなるからです。

まちには多様な人が住んでいます。私は無所属ですが、無所属だからこそ武直樹に届けていただけている声もたくさんあることを実感しています。相談は、他区からも寄せられますし、立場が違う議員には相談しにくいとのお声もよく聞きます。

生野区の人口は現在、約13万人で4人の議員がいます。毎日、毎日新しい相談の声が届きます。現在でも、生野区民の多様な声を届けるには議員数が少なすぎると実感します。

ひとつひとつの市民相談から制度やサービスの矛盾点や課題がみえてきます。その矛盾点や課題を修正したり、改善したりするために声を届けるのが我々市会議員の役割の一つであります。議員が少なくなれば、必然的に声を届けられる議員の数が減るわけですから、現在より、多様な声がとどかなくなり、行政運営を住民の立場からチェクする機能が弱くなることは明らかです。

議会においては、維新さん、自民さん、公明さん、共産さんそれぞれの様々な角度からの指摘や提案は、私1人では気づけなかったことに気づかされます。多様な意見があることはとても大事なことを実感しています。皆さんもその点は、一定は理解していただけるのではないでしょうか?

多様な声をとどけるためには、多様な選択肢があってこそです。議員定数が減ることでその選択肢もなくなってしまいます。

政令市の議員の数は、議員1人あたりの人口数をみれば、もともと少ないですが、大阪市には、他の政令市と比較して特有の課題があります。それは、2人区と3人区の選挙区が圧倒的に多いという点です。

政令市は行政区ごとで選挙を行うことが法律で定められ、20政令市の選挙区は総数で175区ありますが、そのうち定数が4人区以上の選挙区が146区あります。

13の政令市には2人区3人区はありません。残り7つの政令市で2人区3人区が、現在29区ありますが、そのうちの15区が大阪市です。今回の条例改正案では、2人区が9区、3人区が10区となり、24区中2人区3人区が19区となります。つまり、少数意見がますます、届きにくい選挙区となってしまいます。

住民に身近な基礎自治体では、多様な民意を反映させるためには、選挙区ごとにより多くの議員が選ばれるべきだと考えますが、24行政区のままで議員数を削減し続ければ、ますます声が届きにくい状況になります。

こうした課題を解決するためには、府議会のように選挙区の合区ができたらよいのすが、法律上できません。多様な声を届けるために、選挙区定数を増やすためには、合区をするか、議員数を増やすか、選挙区合区ができるよう法律改正するしかありません。こうした議論もあわせて行うべきです。

また、議員11人削減する効果額は、2億1576万円です。議員報酬を現在の月額77万4000円から64万5千円にすれば同じ効果が得られます。多様な声がとどかなくなり、行政運営を住民の立場からチェクする機能が弱くなるより、身を切る改革というのであれば、報酬削減を行って実現していただきたいです。

反対する2つ目の理由は、政令市大阪市の課題のひとつである住民自治拡充の議論が進んでいないにも関わらず、住民自治の手段のひとつである議員の、「定数削減」が結論ありきで進んでいるからです。

議員の民意を多様性として捉えると、議員の定数を減らすのは多様性を減らすということですから、声が届かなくなった人たちの声をどうやって届けるかという住民自治拡充、都市内分権の議論をセットでする必要があります。

つまり、議員を削減するのであれば、住民の皆さんが多様な声を届けられるような参加、参画できる手段を拡充させるべきです。24区個別で見ますと、人口が維持されている区、減少が著しい区、あるいは若年層が増加している区、高齢化が進んでいる区など、その状況は区ごとに大きく異なってきており、従前のままの行政サービスの提供では、各区の間で不均衡が顕著になってきます。

こうした課題を克服し、持続可能な行政運営を実施していく。そして、市民の多様な行政ニーズに応えていくために、区政会議や、地域自治区などをはじめとする住民の皆さんが行政に参加、参画できる制度や仕組みはどうあるべきか?の議論が必要です。

また、現在の区シティ・マネージャー制度の到達点や課題を整理した上で、総合区制度や合区も含めた行政区の在り方、ブロック化など都市内分権、住民自治の拡充についての議論が必要です。さらに、議会側としても、住民自治の機能を強化するために、都市内分権について議論された第30次地方制度調査会で指摘されている「複数の区を単位とする行政区常任委員会設置」などの議論もすすめるべきです。

やはり、議員定数を削減するのであれば、住民の声を届ける手段、仕組み、住民の参加、参画を保障する議論をセットで行うべきです。以上の理由から、今回の議員定数削減条例には賛成することができないことを申しあげ私からの反対討論といたします。

大阪市会 本会議 2023/6/9
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2023年6月9日大阪市会本会議最終日【議員定数を81から11削減し70とする条例改正案について】 6月9日大阪市会本会議最終日。議員定数を81から11削減し70とする条例改正案が最終日9日に大阪維新の会、公明党、自民党の3会派で共同提案され、その日に賛成多数で可決しま...

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●山中智子議員(共産党)の反対討論[全文] 〈大阪市会本会議 2023/6/9〉

私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、議員提出議案第15号「大阪市会議員定数及び各選挙区選出数に関する条例の一部を改正する条例案」に反対する討論を行います。

議員定数の問題は、地方政治における民主主義の根本問題、基本問題だとあらためて申し上げたいと思います。国の議員内閣制とは大きく異なり、首長と議会の議員、双方を住民の直接選挙で選ぶ二元代表制をとっており、それぞれ独自の権限と役割をもっています。地方議会は住民の声を代弁し、住民の意思を市政に反映させるパイプ役としての役割と同時に、行政の長をはじめとする執行機関のチェック役として、その独断と暴走を防ぐという重要な役割を合わせもっています。こうした役割を担う議員数を一定程度確保することは住民自治の発揮のためにも必要であることは言うまでもありません。なかでも275万人もの多様な考えをもつ人々が生活し活動する大都市大阪市にあって、本市会の果たすべき役割は今後ともますます強くなりこそすれ、いささかも弱まるものではありません。今回の減らせばいい、といわんばかりの定数削減は、議会制民主主義の重大な後退を招くとともに、市民と市政をつなぐパイプを細めるものにほかなりません。

全国都道府県議長会のもとにつくられた都道府県議会制度研究会は、報告の中で、議員定数について、「議会は地域における政治の機関であり、行政体制の一部ではない。したがって、議員定数の問題は、単に行政の簡素合理化と同じ観点からのみ論ずる問題ではない。議員定数は、議会の審理能力、住民意思の適正な反映を確保することを基本とすべきであり、議会の役割がますます重要になっている現状においては、単純な定数の一律削減は適当ではない。また競って定数削減を行うことは、地域における少数意見を排除することになりかねない点にも留意すべきである」と警鐘を鳴らしています。

「身を切る」と称して、これほどの削減を強行しそれを誇ることは、突き詰めれば「議会はいらない、必要ない」とみずからの存在を否定するとともに、「少数意見はいらない」と市民の声を切り捨てることにつながると言わざるを得ません。

大阪市会の議員数は、現状でも政令市のなかで、横浜・名古屋に次いで、人口あたりの議員数が3番目に少なく、今回の大幅削減で、名古屋を抜いて2番目に少なくなります。現状でも大阪市の議員1人あたりの人口は33,980人、今回の削減で39,320人です。議員1人あたりの人口が15,000人前後の政令市がざらにあるなかで、多すぎると言える根拠はどこにもありません。

これまでの、議員定数の見直しは、少なくとも会派間で一定の議論・調整を重ねて行ってきました。とりわけ、全面的な見直しの際は、非交渉会派も含めて会議体をつくり、報酬や議会改革など様々な角度から検討・議論をして実施してまいりました。ところが、今回、定数の14%にあたる11人もの削減という、議会のあり方さえ変えかねない定数減にについて、私たち非交渉会派はもちろん、主要会派間でも、ほとんど検討されていないように見受けられます。現に、この削減案に驚いた市民の皆さんから、短期間で提出された33件の陳情について質疑する運営委員会も、議会の大切さを訴え、安易に決めないでほしいと願う陳情について真摯な議論はないまま不採択とされました。まともな議論もなく、4月の選挙直後のこの時期に、4年後2027年の議員定数を決める。2025年には国勢調査が行われるにもかかわらず、極めて拙速に、極めて乱暴に、まるで現在の定数はなんの妥当性もないかのように11もの削減をするというわけです。到底認めることはできません。

陳情された方を含め、多くの市民が、少数意見や多様な意見、自分たちの声が届かなくなる、と危惧しておられます。私たちが選んでいただいている議会のこの議席は、議員の身分だとか特権だとかいうものでは決してなく、市民の代弁者としての役割であり、市民の物です。その市民にほとんど知らせることもなく、市民が声を上げる時間も機会もないまま強行することに強く抗議し、反対の討論といたします。

大阪市会 本会議 2023/6/9

日本共産党 大阪市会議員団ホームページ 「大阪市会議員定数削減」条例案に対する山中議員の反対討論
http://www.jcp-osakasikai.jp/page/action/discussion/230609_yamanaka_teisu.html

大阪市会録画放映チャンネル

●大阪市議会、定数11削減案可決 維新主導で審議は実質1日〈毎日新聞2023/6/9〉

大阪市議会は9日、議員定数を現行の81から11削減し、70とする条例改正案を賛成多数で可決した。4月の統一地方選で単独過半数を得た大阪維新の会の主導で、公明党、自民党・市民クラブの3会派が共同提案し、即日採決した。戦後初の市議選が行われた1947年以降で最大の削減数となったが、公開での実質的な審議はわずか1日のみだった。2027年の市議選から適用される。
全24選挙区(定数2~6)のうち、平野▽東淀川▽城東▽住吉▽北▽生野▽住之江▽東住吉▽西淀川▽東成▽旭――の11選挙区で、いずれも定数を1ずつ減らす。

毎日新聞 2023/6/9
毎日新聞
大阪市議会、定数11削減案可決 維新主導で審議は実質1日 | 毎日新聞  大阪市議会は9日、議員定数を現行の81から11削減し、70とする条例改正案を賛成多数で可決した。4月の統一地方選で単独過半数を得た大阪維新の会の主導で、公明党、自民党...

(参考)「議員定数削減案」提案趣旨:高見亮市議(大阪維新の会)[全文] 〈高見市議のツイートから〉

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