堺市の永藤市長は、2021年に堺市「財政危機宣言」を発表しました。維新の会・馬場代表も「堺市は貯金もなく危機的状況」としましたが、その年の決算は大幅な黒字で、翌年の予算も過去最大規模。その後、市長選を前に永藤市長は財政危機宣言を解除しました。
この一連の流れに、「財政危機を改革で脱却した」と選挙で言うために虚偽の財政危機宣言をでっち上げたのではないか?という疑惑が出ています。
橋下知事時代の大阪府の財政についても詐称疑惑が
財政危機宣言は、大幅な市民サービス削減が見込まれ、市民生活に大きく関わるもの。宣言を出した後、計画を作り、市民の意見を聴取し、議会で諮り、予算化するのが通常の流れ。当然、その効果が表れるのは数年後の財政、ということになります。
ですが、堺市は宣言を出した年にいきなり黒字化したことになります。何もしないうちに黒字になったのに、改革の成果なわけがないという話ですが、永藤氏のマニフェストにはしっかり「改革の成果」と書かれています。
この件と同様に、「維新の改革で財政危機を脱却した」と誤解されているのが大阪府の財政です。2008年の橋下知事は就任時「大阪府は破産会社」としたものの、同年見事に黒字化に成功します。ところがその後の外部監査で、2008年度の不適切な会計処理が発覚。通常であれば赤字で、本当は黒字ではなかったのです。
なお橋下知事は退任時の2011年には「大阪府は優良会社」と自画自賛までしましたが、その優良会社になったはずの大阪府は、翌年2012年に大阪府は「起債許可団体」に転落。2018年まで脱却できませんでした。「起債許可団体」とは財政に問題がある団体ということで、地方債を発行するにも国の許可が必要になります。大阪府は、到底「優良会社とは言えない」自治体になっていたのです。
そもそも長年の借金や支出体質を、たかだか数か月~1年の「改革」で良くすることなど、あり得ません。
あり得ないような「性急な改革の成果」を声高に言う政治家を信用できるかどうか、見極めが必要です。
大阪府「財政非常事態」時系列
2008年2月 橋下知事が、就任当日「財政非常事態宣言」を行い、職員に「破産会社の従業員」と宣言
2008年度 実質収支が黒字化
2010年2月 外部監査で2008年度末の不適切な会計操作を指摘される。
2011年10月 橋下氏が退任時「優良会社の従業員」と職員をねぎらう
2012年 起債許可団体に転落
2018年 起債許可団体を脱却
堺市 財政危機宣言 時系列
2021年2月、「堺市財政危機宣言」を永藤市長は発表
2021年10月 財政危機脱却プランを発表
2021年10月~12月 パブリックコメントなど実施
※この後しか、脱却プランは実施できない。つまり実質2022年度から改革実施。
2022年2月 過去3番目の規模で、2022年度の一般会計予算を発表
※「財政危機脱却プラン」で市民サービスを削っているのに、最大規模の予算。
2021年度決算(2022/9月発表) 71.7億円もの、大幅な黒字
2022年10月 「新人消防士育成」の寄付を永藤市長がツィッター投稿
※つまり、過去最高の大幅黒字だと把握していながら、消防局予算を寄附で募る。
2023年1月 「財政危機宣言」解除を発表
情報源
▼堺市
・馬場 伸幸(ばばのぶゆき 日本維新の会)@baba_ishin (2021年2月8日投稿)
本日「堺市財政危機宣言」が永藤市長から出されました!現在の堺市の財政状況は直ぐに使える貯金は、ほぼゼロ。他の定期預金(的なもの)に頼らざるを得ない危機的な状態です。
〈堺市HP〉堺市令和3年度決算の特徴
一般会計決算
歳入総額は4,696.7億円、歳出総額は4,615.3億円となり、いずれも前年度から減少しているが、引き続き新型コロナウイルス感染症対策を実施したことにより、高い水準となった。
また、実質収支は71.7億円の黒字となった。
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/zaisei/yosan_kessan_shushj/kessan/76267220220922172931390.html
〈朝日新聞2022/2/5〉基金枯渇で「財政危機宣言」のはずが、400億に その理由は……
一般会計の総額は前年度より31億円(0・7%)増えて4267億円で、過去3番目の規模。市税収入は前年度比57億円(3・9%)増え、過去最高の1517億円を見込む。
…昨年時点での30年度までの収支見通しで、貯金にあたる基金を取り崩していくと30年度末には枯渇すると予測。昨年8月には「財政危機脱却プラン(素案)」を公表した。
だが、この日発表した見通しでは残高は目減りしていくものの、30年度末で416億円残ると試算した。
1年前の発表と比較すると、30年度時点で400億円以上上ぶれ
https://www.asahi.com/articles/ASQ2476NCQ10PPTB00H.html
〈ABC 2023/1/31〉堺市長が「財政危機宣言」解除 2年前にコロナで財政悪化し発令 ふるさと納税効果で収支改善と説明
〈堺市HP〉堺市財政危機脱却プラン(案)
〈大阪維新の会HP〉統一地方選挙 2023堺市マニフェスト(永藤氏)
https://oneosaka.jp/touitsu2023/pdf/block_manifest_sakai.pdf
〈堺市HP〉ご意見を募集した案件に対する結果及び本市の考え方【年度別一覧】
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/koho/kocho/publiccomment/kekka_nenndo.html
〈大阪府HP〉「府政運営の基本方針(「大阪維新」2010)」(平成22年2月版)
https://www.pref.osaka.lg.jp/kikaku/isin/isin2010feb.html
〈永藤氏Twitter〉
▼大阪府
〈日経新聞2011/10/31〉橋下知事「皆さんは優良会社の従業員」と辞任の弁
就任直後、府職員に「皆さんは破産会社の従業員」と宣言、府財政は08年度に実質収支が11年ぶりに黒字化。…橋下氏は職員向けの辞任挨拶では「優良会社の従業員」と財政再建の成果を強調しながら労をねぎらった。
https://www.nikkei.com/article/DGXNASHC3102G_R31C11A0000000/
〈現代ビジネス2011/11/8〉「破産会社」はほんとうに「優良会社」になったのか。首長としての実績を問う—橋下「大阪府改革」を検証する
ところが、「11年ぶりの黒字」を正式に発表した後の2009年10月、減債基金とは別の基金からの借入が明らかになった。横山・太田知事時代に6基金から計1533億円の借入があり、うち1479億円が未返済になっていた。
さらに、翌10年2月の外部監査では不適切な会計操作が指摘される。…つまり、大阪府の黒字転換は、違法とは言えないまでも、さまざまな辻褄合わせで成り立ってきた、いわば”見せかけ”の数字だという指摘である
https://gendai.media/articles/-/26964
〈平成21年度 包括外部監査結果報告書 概要版〉
(2008年度に対する大阪府への外部監査報告)
1.継続・反復して実施している単年度貸付は不当 (監査の結果)(報告書本編65ページ)
府では実態として長期の貸付であるものを、年度末日に一旦全額の返済を受け、翌年度初日に再度貸付を行うという単年度貸付を5法人に対して平成20年度中に1,193億円行っている。
これらの短期貸付は、いわゆるバブル崩壊後の府財政状況の悪化に伴い、府の歳入確保による財源対策の一環として、それまで各法人に長期で貸し付けていた資金の繰上償還を受け、その翌年度以降において単年度貸付(短期貸付)を反復・継続的に実施する方式で対応し、今日に至るものである。府の予算編成上、歳入欠陥とならないように、2日間だけ資金を引き揚げているだけであり、実質的には府からの長期貸付である。
当該単年度貸付については、直ちに是正すべきである。
仮に、平成20年度末に2日間のみ民間金融機関から借り入れている金額を、実態どおり府が継続して長期貸付とした場合(すなわち、過去において短期貸付への切り替えを行わなかったものとした場合)、95,692百万円の府の歳入がマイナスとなることから(ただし、府の追加的な資金負担はない)、平成20年度決算における一般会計決算額は85,298百万円の赤字となる(確定値は10,394百万円の黒字)。
〈日経2018/9/20〉大阪府、起債許可団体から脱却へ
大阪府は府債発行に国の許可が必要となる「起債許可団体」から脱却できる見通しだと発表した。財政規模に占める借金返済額の割合を示す実質公債費比率が2017年度決算で17.7%(暫定値)となり、直近3年間の平均値が基準である18%を下回ったためだ。10月に確定する。府は2012年度に許可団体となったが、今後、起債の事務手続きが簡素化される。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35583790Q8A920C1LKA000/
〈参考】
・〈阪南市HP〉2021年2月18日「財政非常事態宣言」
https://www.city.hannan.lg.jp/kakuka/somu/gyoukaku/zaisei/hijyoujitai/1613464458886.html
〈大阪維新の会HP〉阪南市長 水野 けんじ(大阪維新の会顧問)