2020年11月1日、大阪市廃止、特別区設置いわゆる「大阪都構想」二度目の住民投票前に、「大阪都構想」の行政運営コストが218億円増えるという報道がありました。三度目の「大阪都構想」か?と騒がれている今、この218億赤字問題が再び再燃しています。この問題を検証してみましょう。
まず当時の全体像を確認するため、ジャーナリスト幸田泉氏の2020年の記事から、いくつか当時の事実を引用します。

218億の赤字は地方財政の専門家らが既に指摘しており、大阪市財政局の試算は住民投票目前にそれを裏付けした格好
・自治体の予算編成では地方交付税法に基づき、標準的な行政運営にかかる費用「基準財政需要額」を計算しており、大阪市財政局がこの方法に則って「4分割したら費用がいくらになるか」を算定したところ、現状よりも218億円アップしたという内容だ。地方財政の専門家らは以前から指摘していたことで、住民投票目前にようやく大阪市当局が裏付けした格好だった。
その後、大阪市財政局長が松井市長(当時)の逆鱗に触れ、修正会見を余儀なくされたのではと見られています。当時の財政局長の会見が、「218億はデマ」という話の根拠になりがちですが、その後も大阪市はこの件で会見しており、この分割試算が捏造ではないことを認めています。
毎日新聞2020年12月24日の配信記事を引用します。

大阪市を四つの自治体に分割した場合、行政コストが年218億円増えるとした市財政局の試算を毎日新聞が報じたことを巡り、市は24日、掲載前に示された記事の草稿を公文書と認識しながら廃棄したなどとして、局長ら幹部3人を減給の懲戒処分にした。一方で、記者会見した市人事室は「試算は理論値で、捏造(ねつぞう)に当たらない」と述べ、松井一郎市長の過去の発言と異なる見解を示した。
市人事室によると、東山局長らは9月下旬~10月上旬、取材を受けた日経新聞、大阪日日新聞、毎日新聞の3社に試算を情報提供し、「大阪都構想」の住民投票の投開票(11月1日)の前に、毎日新聞が10月26日夕刊で報じた。
試算は、市の人口を単純に4分割した理論値。市は処分にあたって、記者がメールで送った記事の草稿の画像を3人が共有し、公文書になると認識していたのに、市議から提出要請があった後の11月15日に一部を廃棄したことを重視。住民投票直前に公表された場合の影響を十分に考慮せず、関係部署と連携せずに対応したことも問題視した。「重要」と認められる場合なのに松井市長ら上司の判断を仰がず、結果として市民に誤解と混乱を生じさせたことも理由とした。一方、会見では「重要な場合」に「明確な基準があるわけではない」とも述べた。
松井市長は試算について「恣意(しい)的な捏造だ」などと批判していた。市人事室は処分を決める際に、弁護士3人でつくる市人事監察委員会からも「捏造には当たらない」との見解を得たという。また、「提供の時期が違えば問題になることはなかった」と説明した。
松井市長は処分について報道陣に「政令市を四つの自治体に分けた前例はないし、計算手法もないので捏造と言った。ただ、役所としては仮定の数字として出したものだから数字自体は捏造ではないという判断だ」と話した。【田畠広景】
分割コストが出るのは当たり前であり、法定協議会の制度案が異常
大阪市廃止、分割によって「分割コスト」が発生するのは当たり前の話で、市財政局の試算は決して的外れではない。大阪都構想の制度設計を協議する「大都市制度(特別区設置)協議会」(通称、法定協議会)が、分割コストをきちんと計算しないまま制度案を作り上げてしまったのが異常なのである。立命館大学の森裕之教授(地方財政学)は「4人家族で一つの家に暮らすのと、各自が1人暮らしするのとでは、どちらが安くつくかと言うと、明らかに前者。4人バラバラになれば、冷蔵庫、炊飯器、エアコン、テレビなど生活用品を4軒分そろえなくてはならない。それが分割コスト」と説明する。
待つのは住民サービスの削減
さらに「大阪市の廃止・分割」(大阪都構想)が問題なのは、大阪市が4特別区になる分割コストによって行政運営経費が増大しても、国の地方交付税は増額されないことだ。特別区の歳入は地方交付税で補填されない分割コスト分の穴が空くため、特別区の行政は何かを削る必要に迫られる。森教授は「大阪府内の特別区は標準的な行政サービスができない。家族に例えれば、バラバラに暮らす4人の部屋には、エアコンがなかったり、テレビがなかったり、冷蔵庫がなかったり、何か『普通ならある』ものがない状態と言える」と話す。
特別区がかなり貧乏になることを隠しておくため、法定協議会では分割コストを計算しなかった。「金が足りなくて住民サービスが削減される」では、住民投票で「反対」票が増えるのは間違いないからだ。
『当時の財政局の試算がもし捏造であれば、虚偽公文書作成罪に問われるはず。その罪に問われていないこと自体が「捏造ではない」ことを意味すると言える』という指摘もあります。
結論として、「大阪都構想」は218億が赤字という試算は本当です。大阪市もこの試算が捏造ではなかったことを会見で正式に認めているという事実があります。
不確かな情報、デマで大阪市民が振り回されることがないよう願わずにはいられません。
