愛知県知事リコール署名偽造事件に有罪判決が出ました。
リコール活動団体の事務局長だった被告。
日本維新の会愛知5区支部長でもあり、日本維新の会からの立候補が予定されていた人物でもあります。
判決内容は要注視です。
そして、リコール活動がどのような経緯で始まったのか。
そのリコール活動に深く入り込んでいた維新の本質が見えてくる事件です。
地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行
愛知県知事リコール・解職請求をめぐり、アルバイトを使って署名を偽造したとして地方自治法違反の罪に問われた、リコール活動団体の事務局長だった被告に対し、2024年4月、名古屋地方裁判所は「地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行を首謀者として主導した」として執行猶予のついた有罪判決を言い渡した。東海NHK NEWS WEBより記事を引用する。
愛知県・大村知事のリコールを求める県民の署名が偽造された事件では署名活動を行った団体の事務局長だった田中孝博被告が、4年前、佐賀市内でアルバイトを使って署名を偽造したとして、地方自治法違反の罪に問われた。
これまでの裁判で、検察が懲役2年を求刑したのに対し、被告の弁護士は、「体面を保つためにリコール運動の惨敗を避けようとしたもので、うそのリコールを成立させようとはしていない」などと無罪を主張していた。19日の判決で、名古屋地方裁判所の大村陽一裁判長は、「被告は名簿業者から名簿を購入し、必要な数の署名を偽造するよう共犯者に依頼していた。また、犯行が露見しにくように遠方の施設を確保した上でアルバイトを募るなど、組織性、計画性が認められ、地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行だ」などと指摘した。
その上で、「首謀者として犯行を主導していただけではなく、自身の政界進出への足場をつくろうなどとする動機も誠に利己的で厳しい非難に値する。結果的に解職請求に結びつかなかったことなどを踏まえても刑事責任は軽視できない」として懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡した。
判決について、愛知県の大村知事は「民主主義の根幹を揺るがす極めて悪質な戦後最大の署名偽造事件に、大変重い判決が下ったと思っています」と述べた。その上で、「なぜこのような悪質な事案が起きたのか説明する責任は引き続きあり、消えてなくならない」と話した。
名古屋市の河村市長は報道陣に対し、「私自身は偽造について知らなかったが、真面目に署名活動をやっていた人には申し訳ないと思う。田中被告にはなぜこんなことをしたのかすべて話してほしかった」と述べた。
リコール活動の経緯
それでは大村愛知県知事リコール活動がどのようにして始まったのか、経緯を確認しておこう。
2020年6月2日。美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が名古屋市のホテルで会見。愛知県・大村秀章知事の解職請求(リコール)のため、政治団体「お辞め下さい大村秀章愛知県知事愛知100万人リコールの会」を設立したことを明かした。Twitterアカウントも開設している。3万人ものフォロワーがいるが、2021年4月9日を最後に更新されていない。設立に携わったメンバーも説明をしていない。 https://twitter.com/aichikentjireca
デイリースポーツonlineの記事より引用する。
設立主旨は、芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展」展示による主催者責任を問うことなどとした。税金で行った展示内容がふさわしくないと主張する高須氏は「愛知県民として恥ずかしいことをしてくれる知事は支持できない」とし、新型コロナウイルス流行以前から解職請求運動を考えていたと告白。名古屋市の河村たかし市長とも1日に会談したといい、大村知事に対する考えで「ズレは1つもない」と力説したという。
住民投票実現には約86万人強の署名が必要とされ、高須氏は「たぶん大丈夫」と自信を見せた。自身が思う知事像を聞かれ、「河村市長に先頭に立っていただいて、知事をやっていただき、大阪のように市長を選ぶといういうのが1番いい」と進言したが、河村市長からは「国政を狙ってるから、知事なんてやっとれんがねと言われた」と拒否されたことも明かした。
会見には高須氏に賛同した作家の百田尚樹氏、政治評論家の竹田恒泰氏、ジャーナリスト・有本香氏、武田邦彦中部大特任教授が同席。出席者5人のうち、高須氏と武田氏が愛知県在住。
高須氏は大村知事から「府が医療崩壊を起こしていた」と指摘され、完全否定した大阪府の吉村洋文知事にも出席を呼びかけたが、この日は欠席。「公務でかなわなかった。(吉村知事の)お使いの方がいらした」と明かした。
※大阪府民が大阪府に問い合せ、使いの者が誰だったのかを問い合わせたが無回答だった。
リコール団体に関わった維新の本質
吉村知事は当初から、愛知県知事リコールに賛同していた。少し話は逸れるが、このリコールの要因ともなったあいちトリエンナーレで行われ「表現の不自由展」はその後、大阪でも開催された(2021年7月16日から18日までの3日間)が、その時も吉村知事は「安全」を盾に中止すべく積極的に動いた。これは「表現の不自由展」かんさい実行委員・平井美津子氏の記事だ(『月刊 風まかせ』より)。
平井美津子氏の記事によれば、「情報公開で入手した文書で、吉村大阪府知事は大阪府職員からの説明に対し、開催の方向で検討した痕跡はまったくなく、かえって会場ギャラリーの利用承認の取消しには吉村大阪府知事の意向が働いたことが強く推認できることが判明した」という。平井氏は「長期にわたる自公政権、大阪における維新政治が歴史の事実に目をそむけ、排外主義を拡散した結果がこのような事態を誘引したことも忘れてはならない」と結んでいる。
また、吉村知事は大阪市長時代の2018年10月に、サンフランシスコ市との姉妹都市を一方的に解消している。BBC NEWS JAPANの記事を引用する。
サンフランシスコ市に設置された像は、第二次世界大戦中に、日本軍兵士の性奴隷として働くことを強いられた女性を象徴しており、当時の大阪市長・吉村洋文大阪府知事は書面で設置撤回を求めた。
朝鮮半島、中国、フィリピン出身の若い女性をそれぞれ表現した像は、「女性の強さの柱」と名づけられているそうだ。若い女性の像のそばには4人目の女性像も建っており、記念碑の一部となっている。この年配の女性像は、朝鮮半島が日本の支配下にあった戦時中の自分の経験を初めて公に語った金学順(キム・ハクスン)氏を表しているという。サンフランシスコ市長は声明に、記念碑は「奴隷化や性目的の人身売買に耐えることを強いられてきた、そして現在も強いられている全ての女性が直面する苦闘の象徴」だと記した。「彼女たち犠牲者は尊敬に値するし、この記念碑は我々が絶対に忘れてはいけない出来事と教訓の全てを再認識させる」(ロンドン・ブリード サンフランシスコ市長)「我々2都市の市民間に存在している関係を、1人の市長が一方的に終わらせることはできない」ともブリード市長は述べている。
大阪市民にとっても寝耳に水の話であったが、この経緯から吉村洋文氏が歴史修正主義者であることが理解できる。吉村市長(当時)は民間交流事業への補助金も打ち切った。歴史に真摯に学ぶのではなく、歴史を無視し、歴史修正主義者の誤った見解に与しての愚行だと考えざるを得ない。
大村愛知県知事は吉村知事とは正反対の立場を取ったことになる。「歴史の事実に目をそむけず、排外主義に則らず」あいちトリエンナーレ開催を許可した。それが立憲主義を守る行動であり、差別主義者たちに攻撃された不当なリコールと表現するのが妥当に思われる。
ジャーナリスト幸田泉氏も「表現の不自由展かんさい」について記しているので、2本の記事を紹介しておこう。
リコール活動に深く入り込んでいた維新
前述したように、吉村知事はリコール活動に当初から積極的に賛同の姿勢を示していた。この活動を立ち上げた、高須克弥氏に同会議に誘われ、公務があるからと辞退しつつ、応援のメッセージ、品物を送っている旧Twitter(現X)投稿がある。
今回、執行猶予付の有罪判決を受けた田中氏についても、日本維新の会愛知5区支部長の立場で、維新から国政選挙に出る予定の人物でもあったことがわかっている。蜜月というより、リコール団体・リコール活動に維新が深く入り込んでいることが理解できる。
リコール団体の街宣車のナンバーが維新の街宣車と同じものであるという指摘もある。
田中被告に有罪判決が出たとしても、いったい何が起きたのか。大村愛知県知事の発言の通り、これは民主主義の根幹を揺るがす大事件であり、説明責任を果たさないまま終わらせてはならない問題だ。
偽造事件発覚以降、日本を取り戻すのだと勇ましかった関係者たちは一様に口をつぐんでいる。
今後も注視してゆかねばならない。